2012年1月29日日曜日

丸山ワクチンの効果に関する記述の食い違い

 デリケートな問題なので取り上げるか迷っていましたが、先日30年前に大論争の丸山ワクチン 外国人からも使用の要望来る(週刊ポスト2012年2月3日号)で、丸山ワクチンというものを知りました。
がんの3大治療である手術、放射線、抗がん剤の治療を進行度合いによって受けることができなければ、患者は天から見放されたような気分を味わうという。生きる術を求めて必死になっている患者への"救いの手"のひとつが、かつて日本中の注目を集めた丸山ワクチンだ。いまだ認可されていない"がん治療薬"は、現在も年間3万人もの患者に使用されていた。

手術、放射線、抗がん剤という、従来からあるがんの「標準治療」の限界が明らかになりつつある。がんを切除しても、再発、転移し、しかも合併症にも悩まされるといった例が無数に見られる。副作用の悩みも尽きない。そのため、漢方薬、健康食品などを使った「代替療法」が注目されつつある。なかでも免疫細胞の働きを強化してがん細胞を攻撃する「免疫療法」が� ��21世紀のがん治療を担う主力として期待されている。

30年前、その元祖ともいえる薬が、認可をめぐって大論争、大騒動を巻き起こしたことがある。開発者・丸山千里博士(故人。日本医科大学名誉教授)の名前を冠した「丸山ワクチン」である。

丸山ワクチンは、1976(昭和51)年に製薬会社・ゼリア新薬からがんの治療薬として製造承認が申請されたが、1981年に旧厚生大臣の諮問機関だった中央薬事審議会で「現時点では有効性を確認できない」という結論が出され、認可が見送られた。審議会での審議は客観性や公平性を欠いていたという批判が渦巻き、国会での論議にまで発展した。ちなみに、衆議院議員に当選したばかりの菅直人前首相も、当時、認可を求める患者組織を支援していたひとりである。

通常� ��薬として認可されなければ、製薬会社は商品化を断念し、患者に使用されることはなくなる。ところが、丸山ワクチンの場合、治療効果を信じる多くの患者たちから「使い続けたい」という強い要望があった。それを受け、当時の厚生省は苦肉の策を取らざるを得なかった。

治験薬は本来、患者に無料で提供されるが、丸山ワクチンは、患者が全額自己負担する「有償治験薬」として使用を認められることになったのである。この「有償治験薬」は日本では丸山ワクチンが唯一の例である。以来、一部のがん患者たちに使われ続けている。

(中略)

丸山ワクチンががんの治療に使われ始めたのは1964年。以来、現在に至るまでのべ約39万人もの人に投与されてきた。同ワクチン療法研究施設所長の永積惇氏によれば、2010年の1年� ��だけでものべ3万人近くに投与され、そのうち新たな患者も2600人を超える。現在までに使用期間が1か月以上、 5年未満の症例数は15万6600人、5年以上10年未満の症例数は1万800人余り、10年以上の症例数は7000人余りに上る。


 省略部には丸山ワクチンの受け方が書いてありましたが、丸山ワクチンでの効果・副作用・費用・受け方(All About)でもその説明があります。

 そうすると、All Aboutは丸山ワクチンを勧めているのかな?と思いますが、効果についてはやや微妙な言い回しです。

 一番最後の

丸山ワクチンの実績報告

丸山ワクチンの最も大きい効果は延命効果です。胃がんが手術で取りきれなかった場合、化学療法に丸山ワクチンを追加することで、1000人あたり152人の割合で延命効果があると報告されています。

癌の場合、再発や、違った場所への転移のリスクも考えなければなりません。命に関わる病気なので、状態に合わせて有効な治療をいくつか組み合わせて行っていく必要があるのです。丸山ワクチンもその1つの手段と言えます。


 ではその効果を詠っていますが、途中の「丸山ワクチンの効果」では以下のように書かれています。
丸山ワクチンの効果

癌は、本来の機能を失った異常な細胞がどんどん増えてしまい、正常な働きをしなくなってしまう病気。異常な細胞を減らしたり、除いていく必要があります。

癌の治療法には、以下のような方法があります。

* 癌を除く外科手術
* 癌を殺す抗がん剤による化学療法や放射線をあてる放射線療法
* 癌を自分の免疫で攻撃させる免疫療法

丸山ワクチンは、この中の癌に対する免疫療法として使われます。「白血球」という免疫の細胞の活動を高めたり、増やしたりするする効果が報告されています。

コラーゲンという体の中のタンパク質を増やすことによって、コラーゲンが癌を周りを被って、癌が大きくならないようにする効果や、癌細胞が増えるのに必要な酵素を抑えることで癌が大きくならないようにしてくれる効果が報告されています。

ただし、癌に有効な治療に替わるものではなく、あくまで免疫を高める治療であるために、癌の種類に関係なく使用されることになりますが、癌に対する治療と併用しても問題はありません。


 しかし、Wikipediaを見ると、上記の効果の記述と食い違いがあるように思えます。

 Wikipediaで丸山ワクチンの有効性を示す部分は、ほぼ全部「要出典」となっています。

 ただ、丸山ワクチンは正式な「医薬品」として、既に承認されているようです。

 それは"放射線療法による白血球減少症の治療薬として、1991年に承認された「アンサー20」(ゼリア新薬工業)"という形です。

 "アンサー20が効果ありとされた白血球減少症は、悪性腫瘍によって引き起こされる症状、あるいは、その化学療法や放射線療法時の副作用"であり、丸山ワクチンの支持者たちが望んだ抗がん剤としては承認されてはいません。

 先に書いたような「有償治験」が行われているものの、

"今日においてもその薬効の証明の目処は立� �ておらず、医薬品として承認されるには至っていない"

"愛知がんセンターが行った臨床試験と東北大学が行った臨床試験については、丸山ワクチンの有効性が認められなかったとされている。

また、丸山ワクチンに対して特別に不利な扱いをしているとする疑惑については、クレスチンやピシバニールは提出された資料で効果が証明されているので承認が早かった、丸山ワクチンは提出された資料では効果の証明が不十分なので追加資料を求めたから時間が掛かったとされている"

 といった状況です。

 おそらくこの「有償治験」はそもそも治療効果を証明するものはなく、丸山ワクチンを無理やり使うための建前でしょうから、薬効の証明はできないんじゃないかと思います。

 新薬の治験では、重篤な副作用� ��起こさないかを見る治験と、プラセボ(偽薬)を飲んだ被検薬群と比較して効果を見る治験があると思うのですけど、後者では丸山ワクチンを接種できない患者が出てきますから、おそらく行われていないと推測します。

 なお、副作用についてオールアバウトでは、

(丸山ワクチンは)"結核菌の成分で、結核菌そのものではありませんので、大きな副作用はなく、注射部位が腫れると言った、ワクチン特有の副作用が見られます"

 といった説明だけありました。(結核菌との関係については後述します)

 Wikipediaのアンサー20においては、

副作用は、主に、注射部位の硬結、疼痛、発赤、腫脹、掻痒感、水疱形成であり、過敏症の傾向がある場合に、発疹、蕁麻疹、発熱などの症状が現れるが、いずれも5%未満の発症率である。本剤に過敏症の傾向がある場合には、本剤の投与は禁忌であり、発見された場合、アナフィラキシーショックなどを避けるため、即刻、投与を中止しなければならない。

 とより具体的になっています。

 効果については1つだけ付け足すと、小林進衆議院議員は"丸山ワクチンの承認を求めた"そうですが、"丸山ワクチンは1%から2%の効果があるかないか"としており、オールアバウトの記述より著しく低い値を元に推進していたようです。

 最後にこのワクチン開発の経緯です。現在では結核診断用の薬剤として知られるツベルクリンは、もともとは結核の免疫療法として開発されたものだったが、逆に症状を悪化させる結果を招き、治療薬としては失敗に終わりました。

 発明者の丸山千里さんは、コッホの試みに強い関心を持ち、「副作用につながる毒素を特定し、それをツベルクリンから取り除く」という発想で丸山ワクチンを開発したようです。

 そして、開発したワクチンは皮膚� �核、肺結核に対して著しい効果をもたらすと考えました。さらに、この2種の病の患者にはがんが少ないという観察結果をもとにがん治療のワクチンにと考えたようです。

 しかし、実際の因果関係は不明で、かつ現在では結核の既往が肺がんのリスクを高めることもわかっているようです。

 また、丸山ワクチンがこれだけの支持を得るに至ったのは、

"昭和40年代以降『がんの特効薬』との噂が一気に高まり、医薬品の承認の手続きより世論が先行することになってしまった"

 というのが主な原因と考えられます。

 丸山ワクチンについてはこれ以外にもかなりいろいろなことが言われていますが、ここではざっとした紹介に留めておきます。

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