2012年2月3日金曜日

不安商法にまたしても自閉症が利用されている:セレブによるオーガニック・ナチュラルビジネス - ベムのメモ帳Z

[自閉症]不安商法にまたしても自閉症が利用されている:セレブによるオーガニック・ナチュラルビジネス

米国のテレビ女優のジェシカ・アルバ氏が乳児用自然食品を販売する会社の起業に当たって、赤ちゃん用の製品に含まれる多くの有毒な化学物質がアレルギー、ぜんそく、自閉症、ADHD、小児がんなどの原因になっている旨のコメントをしたと報道されています。

■J・アルバが起業、乳児用自然食品をネット販売 – Reuters

[ロサンゼルス 30日 ロイター] 米女優ジェシカ・アルバさん(30)が、環境に優しい乳児用自然食品のベンチャービジネスを始めた。

現在2児の母親であるアルバさんは、4年前に第1子を出産する時、生まれてくる子どものために安全な自然食品や家庭用品を探すのに苦労したという。「赤ちゃん用の製品にも多くの有毒化学物質が含まれていて、これらはアレルギーやぜんそくを引き起こすだけでなく、自閉症やADHD(注意欠陥・多動性障害)、小児がんなどの原因にもなっている」とし、こういった現状に恐怖を覚えたと語った。

今回、アルバさんは「オネスト・カンパニー」という会社を元非営利団体の最高経営責任者(CEO)と共同で設立。自分たちで実際に試した安全で見た目にも美しい「お墨付き」をインターネットで販売する。

※文字の強調は引用者によります。

私は先日、自然食品やオーガニック製品などについて、マーケティングの一つとして高級イメージをまとわせた販売促進を行い、それがぜいたくな嗜好品として売買取引されること自体は否定しないけれども、そこには他の一般製品に対する根拠のない非科学的な不安や恐怖を煽る否定論に陥りやすい側面があり、それは社会的に有害となりうるということを述べました。

■竹炭ピーナッツ。ロハスによる癒しとテクノフォビアによる恐怖
■「米国で自閉症ワクチン原因論に恐怖し、踊らされ、反ワクチン運動を支持した人々」についての補足

自閉症の発症が乳児期に曝される一定の化学物質に関連するという確からしい証拠は少なくとも今のところありません。ありえないとは言い切れないので関連がないとは断言しませ んが、そのようなものであれば他にいくらでもありえてしまいます。

今回の米国の女優は、生まれたばかりの赤ん坊の親たちを、確からしい証拠がないにもかかわらず「有毒」化学物質の不安や恐怖に陥れ、自らのビジネスに導こうとしているもので、お行儀の悪い「不安商法」といえそうです。自らのセレブリティという立場による影響力を利用しようとしているところも批判を強める要素です。この批判はたとえ彼女が善意に基づいて行動しているとしても免ぜられるものではありません。

ちなみにウィキペディアによれば、彼女は2008年の大統領選挙ではオバマ氏を支持し、チャリティ活動に熱心でエイズ患者支援団体やがん患者支援団体、動物愛護活動に関わっているとのことです。政治的リベラルはオーガニックナチュ� ��ル運動との親和性が高いという指摘があることをご紹介したばかりですが、本件もその典型例なのかなと思いました。

彼女が起業した会社のサイトはこちら。
■The Honest Company
報道では自然食品と書かれていますが、ナチュラルでピュアでオーガニックで無毒(non- toxic)でエコな赤ちゃん用紙おむつ、石鹸、シャンプーなどが主力製品のようです。

共同創立者兼Chief Product Officerのコメントには「おむつや家庭用クリーナー、ボディーソープ、洗濯洗剤などの日用品からもたらされる中毒リスクの多くはまだ完全には気づかれておらず、そしてこれらの製品に使用されているいくつかの化学物質がぜんそく、ADHDのような慢性疾患、そしてがんにさえも関連しているというコンセンサスが高まっている」と書かれています。「自閉症」という単語は見つけられませんでしたが、報道されているマーケティングのスタンス(=不安商法)に間違いはないようです。

余談

ちなみに日本で影響力のある有名なASD支援者の中にも自閉症の発症がいわゆる「環境ホルモン」と関連しているという主張を信じている人がいるようです。その可能性はないとはいいませんが少なくとも今のところ確からしい証拠はないと言ってよいかと思います。

その方は環境ホルモン説について「企業の論理が政治的に働いて、議論の俎上にも乗らない」とも述べています。これは自閉症ワクチン原因説の支持者が「製薬会社と政府が私利私欲のために真実を隠蔽している」と主張したことと同じパターンの陰謀論じみた主張でありがっかりしました。

また、その方はマクロビオティックを実践していると述べたり、人里に出現した熊の殺処分に反対する発言をしたりなど、先述した米国女優のようなタイプに似ているよ� �に感じます。ただ、そういった証拠に基づかなかったり誤ったりしている信念に基づいて他人から利益を上げようとしている様子は感じられないことは救いです。

個人の趣味であれば自由であるというのも筋です。しかしながら、ASD当事者やその家族、他の支援者たちに対して非常に強い影響力を持つ方なので、化学製品への恐怖や不安(ケモフォビア)を増幅させたり、古い迷信で標準的な現代栄養学に反するマクロビオティックの信奉者を増やしたりといった悪い影響が広がるのは心配ではあります。誰か偉い先生から忠告していただければいいのですが。

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