がんと自然療法・2 がんはどうしてできますか: 相模原の整体の中村治療院。腰痛・肩こり・坐骨神経痛・膝痛、おまかせ!院長ブログ
現在発癌プロセスに関して世界中で研究が行われています。研究が進めば進むほど難しさが増して来ており、簡単に結論的なことは言え無くなって来ているのが実態ですが、現在分かっている発がんのプロセスと、そこから垣間見えてくる、がんというものについて簡単に紹介したいと思います。
発癌プロセスの研究で、最初に見つかったのが、動物実験でがんを引き起こすウイルスの存在でした。
1909年ニューヨークの養鶏業者の間に鶏が次々と死んでいく事態が生じ、ロックフェラー研究所のペイトン・ラウスに原因を調べてほしいとの依頼がありました。多くの鶏が死んでいるために、ラウスは細菌感染を疑いましたが、死んだ鶏は細菌感染ではなく肉腫と言う結合組織性のがんが出来ていました。
同じがんが多くの鶏に出来て居る事から細菌よりもっと小さな病原体により感染が広がりそれによって、肉腫が多発しているのではないかと考えました。肉腫で死んだ細胞を集め、細菌を透過させない素焼きの濾過器で濾過させて、その液を元気な鶏に注射して肉腫が出来ることが確認されました。それにより初めてウイルスによってがんが出来ることが発見されました。
その後、研究が進み現在では、百数十種類のウイルスが動物にがんを作る事がわかっています。このような研究から人間のがんも、しばらくは、ウイルスが原因のものが多くあるのではないかと、長年研究されましたが、人に直接的にがんを作るウイルスは、いまだ発見されてはいません。
ウイルスと関係のある人のがんでは、西日本に多い成人T細胞型白血病ウイルスによる白血病、B型肝炎ウイルス・C型肝炎ウイルスによる肝臓がん、人パピローマウイルスによる子宮頸がん等が知られていますが、これらのウイルスも直接的に人にがんを作るわけではありません。
成人T細胞型白血病ウイルスの場合、千人が感染しても1人しか白血病になりません、B型・C型肝炎ウイルスの場合も直接肝臓がんを引き起こす訳ではなく、慢性肝炎を長く患っているうちに、肝硬変になるころに、慢性炎症から発がんが引き起こされていると考えられています。人パピローマウイルスの場合も感染者のうち僅かしかがんにはなりません。
また、アフリカの子供たちにバーキットリンパ腫というがんを作り、中国で鼻咽頭がんを作る原因と言われるEBウイルスも、感染者すべてががんに成る訳ではなく、日本人ではほとんどの人がEBウイルスに感染していますが、このウイルスによる発がんは全く報告されていません。ウイルスによる発がんが人の場合、非常に少数派であることが分かっていただけたと思います。
もう一つのがん研究の流れが、発がん物質としての、化学物質・変異原物質の研究です。
この発がんの最初の例は、1775年、ロンドンの外科医によるものです。当時ロンドンでは、石炭を暖炉で燃やして暖房としていましたので、煙突掃除の仕事が多くありました。煙突は中が狭いために、体の小さい子供が毎日体を煤だらけにして、重労働を強いられていました。このような煙突掃除人の間に陰嚢がんが多発しました。
また、コールタールを扱う工場労働者や、アスファルトで道路舗装をする労働者の間に皮膚がんが出来ました。さらに、アニリン染料工業労働者の間には、膀胱がんが多発しました。これらは、後の研究で動物にも同じがんを発生させることが分かり、化学物質も同定されました。その後も様ざまな、化学物質を用いて発がんの研究は進みましたが、当時は細胞の中で何が起きているかは、わかりませんでした。
がんが、遺伝子レベルの異常であることが確認出来る様になったのは、1973年にアメリカのハーバード・ボイヤーとスタンレー・コーエンによる、組み換えDNAの技術が発表されてからのことです。
長年にわたる化学物質による発がん研究で、人の発がんも説明できるのではないかと期待されていましたが、どの発がん物質も動物実験の場合、通常の人間の生活で摂取する程度では発がん実験は成功せず、通常では、考えられない量の発がん物質を使って初めて、発がん実験に成功しています。
コールタールによる発がん実験の場合は、外国では、ウサギ・マウス・犬・モルモット等にコールタールを何ヶ月も塗布したり、注射したりしても、がんは出来ませんでした。
このような中で東京大学の山極勝三郎・市川厚一の両博士がコールタール発がんに世界で始めて成功しました。両博士は101羽のウサギを使い一、二日毎にウサギの耳にコールタールを塗り続け一年後、7羽のウサギにがんを作ることが出来ました。外国の研究でがんが出来なかったのは数十日で実験をやめたためで、その後100日以上塗り続ければ、発がんが起こる事が分かってきました。
現在環境中の発がん物質として有名な、ベンツピレンの場合も、タバコによる肺がんの一番の原因物質とも言われていますが、動物実験でラットに肺がんを作る場合、紙巻たばこに含まれるベンツピレン量(5~50ナノグラム)では簡単にはがんは出来ません、がんを作るには10万~100万倍のベンツピレンを与えて初めてがんを作る事ができます。
その他の発がん物質もほとんどの化学物質は、通常、人が摂取する量では発がん実験は、なかなか成功できず、異常な多量を与えて初めて発がんに成功しています。
このようなことから、職業発がんのように連日多量に化学物質に晒される場合は別として、一般的な生活をしている人達の様ざまながんは、化学物質だけが直接的原因によるがんとは言えない事が分かってきました。
それでは、一般のがんを含めて様ざまながんが、何が原因で、どのようなプロセスで出来てくるかは、遺伝子レベル・分子レベルで研究が進んでいますが、簡単に結論を言えるほど解明もされていませんし、研究が進めば進むほど複雑さが増して、いろんなケースがあることも分かってきました。
発がんのプロセスはともかく、疫学的には、がんの発生原因は、ある程度推定は出来ており、1996年アメリカのハーバード大学の研究チームがまとめた研究があります。
たばこ 30%
生殖 3%
食事 30%
アルコール 3%
運動不足 5%
社会経済要因 3%
職業 5%
環境汚染 2%
遺伝 5%
紫外線など 2%
ウイルス・細菌 5%
医薬品・医療行為 1%
周産期・生育 5%
食品添加物・汚染物質 1%
上のデータを見て驚かれる人も多いのではないでしょうか。がんウイルス・細菌によるものが5%、環境汚染が2%、食品添加物・汚染物質が1%、研究の主流であったウイルスや化学物質が足しても8%にしかなりません。
一番大きく発がんに関わっているのが、たばこ30%(がん全体30%、肺がん90%)と食事30%だと言うことです。このデータの結果は世界のがん研究者のほとんどが支持をしているものです。
タバコに関しては現在分かっているだけでも60もの発がん物質があります。ヘビースモーカーの人達は、四六時中タバコを吸い続けそれを毎日繰り返し、何年も吸い続ける訳ですから、タバコ発がんの人体実験をしているようなものですから、30%の関わりも納得していただけると思います。
端的に言えば、影響1%の食品添加物や農薬を避けて値段の高い自然食品を摂るよりも、タバコを止めるほうが30倍も発がん予防効果が有ると言う事です。
食事とがんの関係は疫学的に長年研究されており、日本型の食事では、胃がん、肝臓がんが多く、アメリカ型の食事では大腸がん、前立腺がん多いことが知られており、日本人でもアメリカで生活すると二世、三世になるにしたがい、大腸がん・前立腺がんが増えてくることが分かっています、また、脂肪摂取が多いほど乳がんに成りやすい事もわかっています。
このように化学物質よりも各自の食事のパターンや、各民族国民の食習慣の違いによって、なりやすいがんの種類が変わっていくことが、疫学的に研究が進んで、いかに食事とがんの関わりが、多きいかが分かってきましたが、食事の場合、一つの食品だけでも分析出来ないほどの物質が含まれているために、ますます発がんプロセスの研究は難しいものになってきています。
発がんの遺伝子レベルの研究も進んでおり、細胞の中には細胞を増殖させるしくみがあります。正常な細胞は体が一旦成長した後は、細胞や組織が欠損場合や、周りの細胞の要請が無ければ分裂増殖はしません。
細胞が正常な場合は、現在50種類ほど知られている細胞成長因子や増殖因子が、細胞膜受容体に結合して細胞内に信号が入り、分裂増殖のプロセスが始まる事が分かっています。
成長因子が結合→成長因子受容体が活性化→細胞内シグナル伝達因子活性化→核内転写因子活性化→細胞周期制御因子活性化→細胞分裂 (詳しく言うと100種類以上の因子がこれらに関わり、さらに周辺から影響を与える因子を考えれば、分析不可能なぐらいの因子が関わっている)。
これらのプロセスは遺伝子が成長因子・成長因子受容体・シグナル伝達因子・転写因子・細胞周期制御因子等のタンパク質酵素を作ることによって進められます。
遺伝子に発がん物質・紫外線やX線などの放射線・体内で出来る活性酸素等が作用して遺伝子に突然変異が起こりますと、正常であれば、周りの細胞の影響下に制御調節されている分裂増殖を促進させる様ざまな因子が、細胞外や細胞内の調節を無視するようになり、絶えず分裂増殖のスイッチが入りっぱなしの状態になってしまいます。
このような分裂増殖のスイッチが入り続けるように変異した遺伝子をがん遺伝子、といいますが、現在までに100を超えるがん遺伝子が発見されています。しかし、細胞は発がん物質や放射線等で遺伝子に異常を起こしても、そのまますぐに、がんに成る訳ではありません。
地球上に生命が誕生して30億年の歴史があると言われていますが、生命が誕生した当初から紫外線放射線の害はありましたし、遺伝子に害を及ぼす様ざまな化学物質も沢山有り、生命体に損傷を与えていました。
そんな環境の中で生命体は絶滅する事無く、進化を続けてきましたので、変異遺伝子を修復する働きや、異常な分裂増殖のプロセスを様ざまな段階でストップさせて正常化させる遺伝子も発達させてきました。それを、がん抑制遺伝子と言います。
一番有名な、がん抑制遺伝子にP53遺伝子があります。この遺伝子が造るP53タンパク質は、遺伝子に損傷が起こると沢山作られます。
作られたP53タンパク質は、線路のようなゲノム遺伝子上を、点検して歩き、遺伝子に損傷があると、細胞分裂のための遺伝子の合成をストップさせて、遺伝子を修復する作業員である修復酵素に、修理の命令をだします。
また,P53タンパク質は、遺伝子の損傷がひどくて修理能力を超えていると判断した場合は、アポトーシスと言う細胞の自殺装置のスイッチを押して破壊させて、がん化する可能性のある細胞を、体に残さないよう働いています。
P53遺伝子以外にも細胞分裂の様ざまな段階で抑制したり、遺伝子修復の手助けをしたりする、がん抑制遺伝子は発見されて、現在代表的なものだけでも21種類あることが分かっています。
がんは、遺伝子的には、がん遺伝子とがん抑制遺伝子との攻めぎ合いの中で、細胞分裂のブレーキ役のがん抑制遺伝子の力が弱り、アクセル役のがん遺伝子の力が強まり、細胞分裂のブレーキが利かなくなり、異常なスピードで増殖を止められなくなった細胞と端的には言えるかもしれません。
がんは、今までは、遺伝子の突然変異から起きる遺伝子病と、一般的には思われていましたが、研究が進むに従い、遺伝子に結合しない変異原性の無い物質なのに、発がん性があったり、がん遺伝子に異常が無いがんが、在ったり、P53がん抑制遺伝子に異常がないがんが在ったり、遺伝子異常では説明出来ない発がんプロセスが、いろいろ在ることが分かってきました。
その一つが、遺伝子には異常はないが、細胞の中にある46本の染色体に、染色体切断、転座、欠失、組み換え等が起きているもの、染色体の数が増えたり減ったりしているものが見つかったりしているものです。
これ以外にも様ざまながんが発見されるにつれて、発がんのプロセスも様ざまで、今までの研究のように、ウイルスだ、発がん物質だ、遺伝子だ、というように細胞内の特定の部品だけを中心に見ても、機械のように簡単にどこの部品が壊れたら、がんに成るとは言えないことが分かってきました。
結局現時点で考えられる発がんプロセスは、細胞の様ざまな働きを司る物質である細胞膜リン脂質、膜タンパク質、シグナル伝達物質、細胞接着因子、遺伝子制御因子、糖鎖、多量の酵素タンパク質、遺伝子、等々数千から数万の物質が関与していると考えられます。
人間の社会で、犯罪者が生まれるのに、千人千様の理由があるように、細胞社会のがんの場合も同様で一つの原因プロセスに特定することは出来ません。
むしろ細胞全体の働きとして捉えて、周りの細胞からの信号を受け取り自らの細胞を調整し、周りと調和して生きていく、様ざまなコミニュケーションシステムが異常を起こしたために、多細胞生物として、周りの細胞と共存していく能力を失い、生命の祖先である細菌の様に、ただ分裂増殖だけで子孫を残そうと言う、細胞の先祖返りを起こしてしまったものががん、と言った大きな捉え方をしたほうが良いのかもしれません。
ですから細胞共存機能のための、様ざまなプロセスの異常が、発がんプロセスに関っている可能性があります。このように考えれば細胞機能に関わるすべてのことは、多かれ少なかれ、細胞のがん化や正常化に関わっていると考えられます。また、変異原性の無い化学物質や、普通の食事のバランスや、運動など一見発がんに関りなさそうなものが、以外に、発がんに大きな影響を与えてる理由を説明できるのではないかと思います。
このようながんに対する認識を新たにすれば、新たながん予防やがん治療の方向性が見えてくると考えられます。次回はがん予防と治療について自然療法を含めてお知らせしたいと思います。
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